<その1>はこちら。さて、「みえるひと」回顧記事もその2です。
今回考えるのは
「みえるひと」が何故打ち切られたのか。それは当然、
人気が無いからです。
では、
何故「みえるひと」が人気を勝ち得ることが出来なかったのか。
そのことについて自分の考えを少し纏めてみましたのでお暇なら読んでいただけると嬉しいです。
(※若干、岩代先生や「みえるひと」への批判が強くなっていることを踏まえてお読み下さい。)
まず、ジャンプという雑誌で1人(or2人)の漫画家が連載するからには念頭におかなければならないのが
ジャンプシステム。
特に新人漫画家に対して切に関わってくるのがご存知
アンケート至上主義です。
このアンケートで票を獲得することが出来なければ即・打ち切りとなる非情なルール。
よって、連載したての漫画家がしなくてはならないのは面白い漫画を描くことだけではなく、
アンケートを投函してくれる客層を掴むことに他なりません。
そして、
岩代先生はそれがあまり理解出来ていなかったのではないでしょうか?
読者がアンケートを投函する対象というのは
個人的に応援している漫画(後述の固定ファン漫画)、
もしくは
その週で特に目を惹かれた漫画、間違いなくこの2つのどちらかである場合がほとんどだと思われます。
「3つを選べ」とされている以上、選者としては思わず 印象に残った漫画を選んでしまうものです。
自分も毎週or毎月の雑誌感想で「今週(or今月)の1〜3位」という項目を設けている身なので それがよく分かります。
そして、そのシステムを巧みに利用した最大の好例が「魔人探偵脳噛ネウロ」。
インパクトの強すぎる犯人達のキャラクターは、アンケートに書かざるを得なくなってしまうインパクトの強さがあり、
また 「アヤ編」などの正統派な推理漫画のストーリーの中にも、やはり強いインパクトを隠し持っている漫画です。
対して、「みえるひと」には
読者の目を惹きつける『何か』が完全に欠けていたと言えます。
また、ジャンプで生き残っている作品には共通して
強いインパクトが存在します。しかし、「みえるひと」にはそれが無い。
目を惹くものもインパクトも無い漫画、俗に
空気漫画と呼ばれるこのタイプの漫画は
ジャンプシステム上では完全な
打ち切り漫画の典型例です。
しかし、当然 漫画は「インパクトがあればいい」というものではありません。
そもそも「空気漫画」と呼ばれる漫画は、大抵インパクトが少ない代わりに 明確な突っ込みどころが少ないことも特徴です。
インパクトが弱くとも、丁寧に堅実に作り上げられた傑作漫画はこの世にいくらでも存在します。
そして、岩代先生はまさに この丁寧に漫画を作り上げるタイプの漫画家です。
終盤こそインパクトへの気遣いが見られたにしろ、序盤の展開はただひたすら堅実に設定やキャラを作り上げていました。
それこそ、
時間をかけすぎてしまった程に。……そして、ご存知の通り開始10数週で掲載順は
あの有様。
要するに、ジャンプに於いては
インパクト>>>>>>堅実性だということは周知の事実であり、
この辺を理解して連載を挑まないと痛い目を見ます。
堅実に丁寧に漫画を描くように努力しても、インパクトが弱いと結局のところ打ち切りは免れません。
ジャンプでは堅実性や他の何よりも、
良い意味でのインパクトが求められる以上、
それを理解することが出来ていなかった岩代先生、及び「みえるひと」が淘汰されてしまうのは当然のことだったと言えます。
ジャンプ誌上でインパクトの無い漫画を描いてしまった…これが岩代先生最大の敗因です。
そして、このインパクトを強くしていくことにより、
固定ファンを手に入れることが出来ます。
固定ファンは比較的高い確率でアンケートに その作品の番号を記入してくれますし、
熱烈なファンであれば1位に、そこまでのファンでなくても(他に1位にしたい漫画がある人でも)3位までには記入してくれるでしょう。
そしてそれがメイン読者層、つまり小中学生だったら編集部にもその漫画をもっと長く続けようと思わせることが出来ます。
こういうことが出来て初めて、ジャンプという誌上で生き残っていくことが出来るのです。
そして、その固定ファンを掴む為の方法が、面白い展開を考えることであったり、魅力的なキャラを投入することであったり、
キレ味のあるギャグを挟むことであったり、時には あからさまなテコ入れをすることであったりと、
つまり、
インパクトを強くすることなのです。ジャンプという雑誌でインパクトというものは生命線以外の何物でもなく、
このインパクトを更に強めていくことに、どの漫画家も全力を注ぎます。勿論、その作品を良い方向に導く為に。
また、そういった切磋琢磨を強く助長できるところこそが、ジャンプシステムの大きなメリットでもあるのです。
ジャンプシステムが
アンケート票の相対評価を重視する以上、これ位は最低限の努力です。
ファンに媚びるとかそういうのでは無く、これは少しでも読者のニーズに答えようという
立派な努力だと自分は思っています。
勿論、漫画を打ち切られては食べていけないということも背景にはあるのですが。
そして事実、現在のジャンプで主力となっている漫画を見ても小中学生のハートを惹きつける『何か』を持っているのは一目瞭然。
例を挙げていけば、
「ONE PIECE」
・壮大な世界観とストーリー。
・分かりやすい絵。
・熱いバトルやドラマ。
「NARUTO」
・トリッキーかつスピード感溢れる忍者アクション。
・『チャクラ』、『忍者』、『血継限界』に代表される小中学生からの食いつきの良い設定。
「アイシールド21」
・大迫力のアメフトシーン。
・とっつきやすい絵柄・キャラクター。
・テンポの良いギャグ。
「DEATH NOTE」(終了作品ですが)
・読み手すら緊迫させる心理戦とそのトリック。
・圧倒的な画力。
・次週を待ちきれなくさせるヒキの上手さ。
「To LOVEる」
・最早「あざとい」の言葉が野暮になるぐらいに連発されるサービスシーン。
・巨乳暴走お姫様、純情クラス委員長、ロリ妹、といった具合に各方面への好みを取り揃える用意周到さ。
・ラブコメ好きの読者をも引き込める話の転がし方。
…と、ざっとこんなものでしょうか。
最後は
ネタに走ったかに見えるかもしれませんが、かなり本気で書いてます。
では、対して「みえるひと」はどうか?
そういった要素が。つまり読者を引き寄せることのできる『何か』が他の漫画に比べて圧倒的に欠けていました。
絵は並程度の画力でありがち、キャラクターは悪くはないものの熱烈なファンを呼び込めるほどの吸引力はありませんでした。
この漫画の初期の魅力は作品内に漂う
アットホームな雰囲気だったと自分は思っていますが、
その最大の魅力も
小中学生が相手だということを考えると やはり
考えが足らなかったことは否めません。
小中学生が求めているのは そんな「まったり系」の雰囲気を持つ漫画ではなく、
バトル漫画のような息詰まる緊迫した雰囲気の漫画です。
「みえるひと」もその煽りを受けてバトル漫画化したといえばしたのですが、
掲載順が下降していった状態でのことだったので人気は得づらいものでした。
ハセの登場シーンに暫定最終回の空気が漂っていたのも非常にまずいことです。
以下のことは自分の知人の証言を元にして言うのですが、
打ち切りの空気が漂い始めた漫画を見捨てる人は予想以上に多いらしいです。
ジャンプシステムを知ってしまっているが故に、打ち切りの空気が見え始めると「どーせ打ち切られるならもう見なくていいや」
という考えに及ぶこともしばしばあるのだとか。
また、この考えを引き起こす人には
何かの漫画の『ついで』にジャンプ本誌を読んでいる人が多いと言るようです。
「ワンピース」が好きでジャンプを読んでて ついでだから他の漫画も読んでおく……例を挙げればこんな人達です。
こういった人は元々ジャンプという雑誌自体に愛着が少なく、従って
読まない漫画がある人が多い。
そして、固定ファンとしてその人が応援している特定の漫画を生き残らせようと
アンケートは出すことも多い。
つまり、打ち切り集を漂わすということは こういった人たちの
読者離れを引き起こすことになってしまうのです。
そして、一度離れた読者がもう一度その漫画を見直してくれるというケースは
そう多くありません。
勿論、再び「みえるひと」に注目してくれた読者もいたからこそ「みえるひと」が連載1周年に辿り着くことが出来たのも事実ですが、
やはり(自分の経験上)、離れたままの読者の方が多かったのではないかと思います。
つまり、「みえるひと」がバトル路線化しても掲載順が浮上することが
出来なかったのはこういう理由が背景にあったからだと考えることも出来るのです。
つまり、岩代先生がバトル路線化の
「導入」でつまずいたことはかなりの損失を招き、
そして、そういったことにインパクト不足が重なってしまっては固定ファンも離れていく………。
「みえるひと」は固定ファン作りに失敗したこれも大きな敗因に挙げられます。
つまり纏めると、
・致命的なインパクト不足 ・バトル路線化当初のつまずき ・それによる読者離れ、固定ファンの少なさ |
これらが大きな敗因として挙げられるものです。
ただ、2つ目に関しては冬悟の過去編の質などが高かった為 一概には言えないところもあります。
事実、自分が「みえるひと」に本格的にハマり始めたのは その冬悟の過去編からでしたので。
また、こういったパターンで打ち切られた他作品には「切法師」や「ユート」、「サラブレッドと呼ばないで」などが思い浮かびます。
これらの作品は自分が好きだった打ち切り作品です。
ストキン受賞者ばかりなのが気にかかりますが……。
また、こういった作品は
サンデーでやった方が活きることが多く、
自分は岩代先生もサンデーに来てくれないかとも思っています。……無理かな?
サンデーはジャンプのように超・短期での打ち切りというものが無い為、
比較的 設定やキャラをじっくりと作り上げていくことが出来ます。
ジャンプ読者 兼 サンデー読者としては「みえるひと」でそれが出来ていれば と思わざるにはいられません。
当然、サンデー漫画にもインパクトは切に求められるのですが、ジャンプほど一辺倒でなくても良いのも確か。
最も、サンデーには「結界師」という 「みえるひと」と
雰囲気モロ被りな作品があるので無理な相談でしょうが、
少なくとも上記に挙げたストキン作家の皆さんはサンデー向きかと。
サンデー漫画に最も求められるのは
構成力なので、賞の特性上 構成力の高い作家が選ばれるストキン受賞者は
比較的サンデーに向いた作品が多くなってしまう傾向があるように思えます。
まあしかし、岩代先生はジャンプ作家です。話が逸れたところ悪いのですが、ジャンプという雑誌に於いて
岩代先生が次回作でどうすれば生き残れるか最後に1つだけこれを考えさせて下さい。
しかしまあ、これはもう
インパクト作り意外に無いでしょう。
設定にもキャラにももう少し大きくインパクトを加えてしまえばきっと次回作は成功を掴むことが出来るはず。
元々、演出力や構成力などの地力は確かな岩代先生のことなので、
あと一味
メイン読者層を惹きつける『何か』さえ手に入れてしまえばヒット作を生み出せないことはないはずです。
特にキャラ作りは連載中にかなり上手くなったと思います。
連載当初は本当にじっくりとキャラを作り上げていくスタイルでしたが、
人間願望編以降のキャラ付けはそれまでとは一変し、ほんの数話で完全にキャラクターを立たせることが出来ていました。
そしてその辺りはガク達の個性にも深みが出てきた頃です。ジョジョ的な回想の使い方も上手くハマっていたと思います。
幸運によるものとはいえ、1年以上の連載が出来たことは岩代先生に
大きな成長をもたらしました。
今後、岩代先生の読切がいつ本誌or増刊に載るのかは分かりませんが、
その場合は是非とも『設定』の方にインパクトへの配慮が見られれば と思います。
そう、
岩代先生には“次”があるですので、ファンとしては楽しみに次回作を待つことにしましょう。
以上で「みえるひと」回顧記事その2を終わります。最後まで読んでいただきありがとうございました。